「HG 1/100 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)」レビュー
最新高性能試作機がプラモデルに、差し替えによる3段変形の魅力!
勝田哲也2023年8月25日 00:00
【HG 1/100 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)】
8月26日発売
価格:4,400円
全長:約200mm(ファイター時)
BANDAI SPIRITSは8月26日に「HG 1/100 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)(以下、HG YF-29)」を発売する。本商品はHG「マクロス」プラモデル 新シリーズ第2弾に当たり、「HG 1/100 YF-19」同様、あえて差し替えパーツを使用する変形で、ファイター、ガウォーク、バトロイドの3段変形を実現している。
YF-29はYF-19と比べスマートなデザインだが、登場した「マクロスF」のみならず、その8年後の世界を描く「マクロスΔ」の最新鋭機も凌駕する機体とされており、現在でも人気が高い。「HG YF-29」はそのカッコイイYF-29を堪能できるプラモデルだ。今回、発売に先がけてサンプルを組み立てることができた。商品の魅力を紹介したい。
AIで記事を要約する(β)
「HG 1/100 YF-29 デュランダルバルキリー(早乙女アルト機)。8月26日発売、価格は4,400円
フォールドウェーブシステムを持つ"超可変戦闘機"をプラモデルで再現
プラモデルそのものの紹介の前に、モチーフであるYF-29を掘り下げたい。YF-29はTVアニメ「マクロスF」では登場せず、劇場アニメ「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~」のクライマックスシーンでその姿を現す"最新技術が多数搭載された試作可変戦闘機"である。
「マクロスF」の劇場版はTV版を元に再構成された「劇場版マクロスF~イツワリノウタヒメ~」と完全新作ストーリーとして描かれた「劇場版マクロスF~サヨナラノツバサ~」の前後編で制作されている。TV版とはキャラクターの立ち位置など異っているが、その最たるものがYF-29の活躍と言えるだろう。
YF-29はTV版の主役機であるVF-25メサイアと同じYF-24エボリューションから発展した姉妹機といえる存在だが、VF-25の性能を大きく越える最新高性能試作機として設定されている。大気圏内でのトリッキーな旋回性能を重視した前進翼、バトロイド時には足になる2基に加え、翼部分に2基のエンジンを持っている。翼のエンジンは飛行中に自由に角度を変えることができ、高い運動性を実現している。
バトロイド形態
ファイター形態
ガウォーク形態。3形態への変形を本商品は差し替えで再現している
機体のコンセプトはVF-25の追加装備である「トルネードパックが標準装備となった機体」。機体上部には旋回ができる2つのビーム砲、脚部と肩にはミサイルランチャー、さらに銃身が上下に割れることでより強力な攻撃が放てる重粒子ビームガンポッドを搭載している。
そして最大の特徴が超空間航法や、超空間通信を可能とする「フォールドクォーツ」の超高純度のものを4基も搭載した「フォールドウェーブシステム」。このシステムを発動させることでYF-29はエンジンの性能を限界以上に引き出し、パイロットにかかるGを一時的に蓄積することで高機動を可能にする「ISC」性能の大幅な向上させ、これまでの可変戦闘機とは別次元の存在となる。
超時空生命体・バジュラとの戦いを止めるべく主人公早乙女アルトがYF-29を駆り、シェリルとランカ、2人の歌姫の歌をバジュラに届けるために飛ぶ。襲いかかってくるバジュラをかいくぐり、妨害しようとするVF-27ルシファーと空中戦を繰り広げ、バジュラの中枢であるバジュラ・クィーンへと向かうYF-29は、フォールドウェーブの最大稼動により金色のオーラを纏い、2人の歌と共に突き進む。映画のクライマックスでは誰もが歌姫達の歌と共に飛ぶYF-29の姿に魅入られるだろう。
【ランナー/シール】
多色成型のAパーツ
クリアパーツは光沢を放っている
赤、白、灰色など成型色で機体のカラーを表現
ネーマーシールは非常に細かくピンセットが必須だ。このシールを使うことで質感がグッと上がる
プラモデル「HG YF-29」はこの"試作可変戦闘機"であるYF-29の魅力を堪能できる商品だ。派手で細かいデザインを成型色とシールで表現。ファイター、ガウォーク、バトロイドへの3段変形は複雑な変形機構を、完全再現ではなく差し替えパーツを使うことで、各形態でのスタイリングを重視した変形を実現している。
パーツは複数の成型色を1つに収めた「Aパーツ」を加え12枚のランナーで構成。赤、白、灰色のパーツで構成されている。本キットの特徴の1つが「ネーマーシール」。シールは非常に細かく、YF-29の細かいデザインをこのシールで再現している。パーツの色分けと、シールを使うことで塗装しなくても劇中のイメージに近い雰囲気に組み立てることができるのだ。次章から早速組み立てていこう。
多色成型とシールで劇中のYF-29の雰囲気をしっかり再現
プラモデルでは最初に「バトロイド形態」を組み上げていく。この形態を組み上げてから、パーツを活用しガウォーク、ファイターへと変形させていくのだ。まずは頭部。YF-29の頭部はセンサーの集まった複雑なデザインとなっており、クリアパーツを重ねていくのがカッコイイ。パーツを重ね合わせ、シールを貼るとラインの多いYF-29の頭部がしっかり組み上がる。
【頭部】
クリアパーツを重ね、シールを貼って組み上げていく。細かい色分けに注目
次は胸部の組立。YF-29は設定上変形時に腕の付け根と肩がかなり複雑に可動する。このためヒンジが複雑に組み合わさり、完全変形を目指した商品はこの部分の耐久力が低下しやすかった。「HG YF-29」は腕を展開した形でのパーツ構成となっており、耐久性があるだけでなく、バトロイドとして自由度の高いデザインとなっている。差し替え変形ならではのパーツデザインだ。
【胸部】
肩パーツ。変形モデルだと耐久度に不安があり、肩のラインが崩れてしまいがちだが、「HG YF-29」は変形機能をオミットすることでしっかりした構造となっている
基部にパーツをはめ込んでいく。かっちりと組み上がるのが気持ちいい
YF-29の胴体は、ファイターの機首部分になる。機種が垂直になりその上に胸部が載るというデザインだが、プラモデルではバトロイド専用パーツとして構成されており、構造がしっかりしている。アクションフィギュアさながらに動かしてポーズ付けが楽しめるのもこの構造があってこそだろう。
【腹部】
ファイターの機首部分が腹部となる。ちゃんとコクピットに計器板のシールを貼るのが楽しい
キャノピーを付けるとコクピットらしさが強まる。キャノピーの枠はシールで表現
胸部パーツを取り付ける
腕部はフレームに外装を取り付けていく。メカらしいディテールもあってこの部分は特に「ロボットを組み立てている」という感覚が楽しい部分だ。パーツ構成で赤、白、灰色が組み上がり、複雑なカラーリングの腕がきちんと組み上がっていくのが楽しい。
これまで組み立てた頭、胸、腹、両腕を取り付けることでグッとYF-29らしさが強まった。スマートでシャープなデザインがしっかり実感できる。次ページでは足や背部を組み上げ、バトロイド形態を完成させよう。
【腕部】
フレームに外装を取り付けていく
シールドや手首パーツ、肩も取り付ける
これまでのパーツを組み上げる。YF-29がしっかり組み上がっていくのを見るのは楽しい
【ガウォーク完成】
脚パーツを鳥の脚のような逆関節に変形。
腕パーツを組み合わせると、ガウォークらしいシルエットに
背中パーツを変形、翼を拡げる
変形機能を内蔵した足部分の組み立て、武装とエンジンでバトロイド完成!
「HG YF-29」は足部分は3形態共通のパーツになっている。このためロボットとしての可動だけでなく、変形機構も内蔵している。一見複雑そうに思えるのだが、こちらもフレームに外装を取り付けるだけで、組み上げることができる。
一方で非常に苦労したのが、足首部分。足首の装甲に細い白いラインがあるが、シールなのだ。数ミリの幅しかないシールを装甲の縁に貼り付ける作業は、かなり精神を集中する必要があった。「HG YF-29」のネーマーシールはかなり耐久性があり、失敗しても張り直すことができる。シールは細かく、箇所も多いが、落ち着いて作業すればしっかり貼り付けることができるだろう。
【脚部】
足首の白いラインは非常に神経を使った。耐久力の高いネーマーシールは作業の負担をかなり低減してくれる
脚部も基本的にはフレームに外装を取り付けていくが、逆側にも曲がるなど、変形システムを内蔵している
装甲を取り付けていく。脛の外側に着いているのはミサイルポッドだ
股間ブロックを取り付けた後、本体に接続。人型が完成だ
次の部分も3形態共通の背中ブロック。翼部分のエンジンを組立て、主翼に組み込んでいく。YF-29は主翼が伸び縮みする構造となっており、これを組み立てるのは面白い。左右のブロックを組み立ててから中央パーツに接続する。
この背中ブロックに2連装のビーム砲を取り付ける。このビーム砲は砲身だけでなく基部も大きく展開する。アームによるフレキシブルな可動も特徴で、YF-29の大きな特徴と言える。背部ユニットにこのビーム砲を接続し、本体に取り付ける。
【背部】
主翼部分のエンジンブロック組立
主翼は折りたたむことができる
こちらは翼を拡げた状態
ビーム砲の組立
ビーム砲を伸張すると大きくシルエットが変わる
背部ユニットへはアームを介して取り付ける
本体へ接続
バトロイド形態の最後はガンポッドだ。ガンポッドの展開ギミックはVF-1からの伝統ともいえる要素だが、YF-29はダイナミックに砲身が上下に割れ、開放型バレルとなる。この砲身が分割されるギミックはマクロスやゼントラーディの艦船の荷電粒子砲を思わせる。その攻撃の強力さを想像させるデザインだ。
ガンポッドを持たせることでバトロイド形態の完成となる。スマートでありながら背中のエンジンブロックや、ビーム砲、大型のガンポッドなど武装の充実が伝わってくる。次章はこのバトロイドを"変形"させていこう。
【ガンポッド】
ガンポッドの銃身は取り付け場所を変えることで開閉状態を再現
支柱パーツを組み立てる
【バトロイド完成!】
バトロイド形態の完成、ガウォーク、ファイター形態も組み立てていこう
共有パーツを変形させ、ガウォークに差し替える
「HG YF-29」はパーツ差し替えの3段変形が可能だ。各形態にするには、パーツを外し、差し替える必要がある。バトロイドからガウォークに変形させるために、まず、バトロイド形態からブロックごとに分解していく。
胴体、腕、背中、足に分解。差し替えやすいようにガンポッドを握った腕も外しておく。この中の胴体部分はバトロイド用パーツとなっている。胸部分は全形態共有パーツなので、胴体から外しておく。
【パーツ分離】
胴体、腕、背中、足に分解
胴体パーツから胸部分を外しておく
「HG YF-29」では"ガウォーク専用パーツ"は存在しない。ファイター用パーツと、バトロイド用パーツを組み合わせてガウォークを作ることができる。このためファイター用機首パーツと、ファイター用頭部パーツを組立て、組み込んでいく。
【ファイター用パーツ】
機首パーツ。コクピットにはパイロットフィギュアを乗せる。キャノピーをかぶせれば完成だ
脚部、腕部、背中のユニットは変形用に調整し、差し替える必要がある。脚はガウォークならではの逆関節に曲がる形態にしていく。ここに直接腕パーツがつくことで、ガウォーク形態の特徴的なシルエットが組み上がる。
完全変形が可能な「DX超合金 YF-29デュランダル」ではこの形にするのに各関節を動かしパズルのように変形させる必要があるが、「HG YF-29」はパーツを分解し、各パーツを変形、それを組み合わせて作るというシンプルな変形となっている。気軽に差し替えられるシステムだと感じた。
【パーツを変形させ、組み合わせる】
脚パーツを鳥の脚のような逆関節に変形。
腕パーツを組み合わせると、ガウォークらしいシルエットに
背中パーツを変形、翼を拡げる
これまでのパーツを組み合わせることでガウォーク形態の完成となる。戦闘機とロボットの中間のような「マクロス」メカならではの形態だ。差し替え変形ならではの各部がしっかり固定されているのが良い感じだ。
次ページではファイター形態への変形、そして武装展開のギミックや、各形態のアングルを変えた写真を撮っていきたい。
【ガウォーク完成】
脚パーツを鳥の脚のような逆関節に変形。
腕パーツを組み合わせると、ガウォークらしいシルエットに
背中パーツを変形、翼を拡げる
すべてのパーツがかっちりとはまるファイター形態
"可変戦闘機"という名前の通り、バルキリーにとっては、ファイター形態が基本の形態と言える。YF-29も金色のオーラを纏ったファイター形態で敵陣を切り込んでいく姿が強く印象に残る。ファイター形態はYF-29の手足がかっちりと収納され、パーツがまとまっているところが特徴だ。
各パーツをまとめるためにあるのがファイター用の腕部パーツ。塗り分けも最小限になった思い切りの良い設計になっているのが面白い。このパーツを使うことで、よりパーツをぎゅっとまとめることができるのだ。
【ファイター用腕パーツ】
このパーツを使うことで、各パーツをしっかりまとめることができる
機首パーツを腕パーツ、脚パーツを取り付けていく。脚をしっかり腕パーツに付けることで固定し、かっちりとしたファイター形態とすることができる。これに背中パーツ、ファイター用頭部パーツを組み込むことでファイター形態の完成となる。
【パーツを組み上げる】
腕パーツ、機首パーツ、脚パーツを組み合わせ、脚パーツを変形、腕パーツで固定していく
背中パーツ、頭パーツを取り付けて、ファイター形態完成だ
【ファイター形態完成】
前進翼、赤いカラーリング、YF-29のファイター形態は強いインパクトのあるデザインだ
これで3形態全部が完成した。次章では「HG YF-29」のギミックを紹介し、様々なアングルからの写真をお見せしたい。
ランディングギア、武装展開! 多彩なギミックを楽しむ
各ギミックを楽しんでいこう。「HG YF-29」ではランディングギアも用意されている。パーツを差し替えることで駐機状態を再現、さらにガンポッドを懸架するためのパーツも用意されている。
【ランディングギア展開】
カバーを開けランディングギアパーツを装着。ガンポッド懸架パーツも用意されている
そしてバトロイド形態ではミサイルポッド展開のギミックが楽しい。肩と足のミサイルポッドが展開するのはYF-29のインパクトのあるギミックの1つだ。細見の体なのにスーパーパーツ装備時のような多数のミサイル攻撃が可能なのである。もう1つ、盾からナイフを取り出すことができるのも嬉しいポイントだ。
【ミサイルポッド展開】
肩と足、ミサイルポッド展開
盾からナイフを取り出す。VF-25から受け継がれるギミック。
最後は3形態を様々なアングルから撮影してみた。YF-29のカッコ良さを実感できる。特にバトロイド形態はもっともっとポーズを取らせたいと感じた。
「HG YF-29」はかなり満足度の高いプラモデルだと感じた。シールはちょっと難易度が高く感じたが、使用することで細かい塗り分けが再現でき質感が大きく向上する。そしてやはり変形システムだ。複雑な変形を差し替えでシンプルに再現、各形態でかっちりとパーツがはまり、崩れないのが良い。
YF-29はアニメ「マクロスF」の主役機VF-25の姉妹機であり設計や変形システムにも共通項が多い。YF-29をかっちり仕上げたならば、VF-25の商品化にも大いに期待したいところだ。
複雑な変形システムを持つ「マクロス」のバルキリーを、その特徴を大いに活かしつつ、組み上げやすいプラモデルとしているこのシリーズは多くの人にオススメしたい。スミ入れなどで質感を挙げるのも良いだろう。今後のラインナップとして「YF-29(マックス機)」そして「YF-21」が発表されている。ここからの広がりも楽しみにしたい。