Vol.92●TR EMBLEM 1 (TR計画エンブレム1)
宇宙世紀における各組織や各部隊には、それらを示すエンブレムが定められるケースが見られた。これは、そこに所属する兵員に一体感を抱かせると同時に、士気を向上させる効果もあった。また、エースパイロットの中には個人を示すパーソナルマークを有する者も多く、パーソナルカラー同様、戦場において敵味方への心理的影響も無視できないほどであった。こうしたエンブレムは『TR計画』においても採用されている。
ティターンズが主導した『TR計画』で開発されたTR-1からTR-6の各機は、それぞれ機体を示すエンブレムを有した。これは最初期の機体であるRGM-79SR ジム・スナイパーⅢに始まり、計画の最終系であるRX-124 ガンダムTR-6[ウーンドウォート]、そして[インレ]にも固有のエンブレムが定められ、各機のⅡ形態にも引き継がれている。
これらのエンブレムは機体の特性を示すものが多い点も特徴である。また、どのエンブレムも共通してウサギをモチーフとしている点も特徴で、デザインはブラックオター小隊のカール・マツバラが考案した。
ジム・スナイパーⅢ用のエンブレムで、当初はカールがブラックオター小隊のエンブレムとして提案し、自機のシールドやエリアルド・ハンターのヘルメットに書き込むなどしたことで、部隊章として定着。のちには[ウーンドウォート]のエンブレムとしても使用されることとなった。
シールドを背景に跳ねるウサギをモチーフとしている。これは、宇宙と地上の双方で活躍するティターンズ実験部隊を示しているが、ウサギと同じ実験動物という暗喩でもある。
[ヘイズル・アウスラ]用のエンブレム。赤いリボンが巻かれたボックスの上にウサギが乗った意匠で、左肩のミサイル・ポッドに描かれる。
ロールアウトを記念したデモンストレーション時に付されたとされる。
なお、その際には機体も赤と白で塗り割れけられたほか、フロントアーマーには「∞(無限大)」のマークも描かれた。このマークとボックスは、オプションによる[ヘイズル]の拡張性の高さを示すものであったといわれる。
決戦兵器[インレ]用のエンブレム。大きな翼を持つウサギが描かれているが、見ようによってはティターンズのエンブレムとも見て取れる。
ウサギがタカに生まれ変わったとも思える意匠だが、これは実験機であったTR計画機がティターンズの最終兵器である[インレ]として完成したことを示している。
ひと際大きな翼をもつウサギをモチーフとした[フライルー]、[フライルーⅡ]、[ファイバー]、[ファイバーⅡ]用のエンブレム。長大な槍は人参を貫いている。ギャプランTR-5は単機での高高度迎撃などを行う機体であるため、天罰を与えるために天空から降臨した天使をイメージしたものとなっている。
[ビグウィグ]、ビグウィグ・キャノン用のエンブレム。ヘルメットをかぶったウサギはハイザックを、抱えた長銃はビグウィグ・キャノンを表している。ハイザックではシールドに、[ビグウィグ]ではリアアーマーに描かれた。
[キハール]、[キハールⅡ]用のエンブレムで、クチバシと翼を持つUFOに乗ったウサギを模したものとなっている。UFOが[キハール]を、ウサギが搭乗MSを示しており、[キハール]のSFS的な側面を現したエンブレムといえる。なお、宇宙仕様ではUFOがクチバシなどのないUFOとなっている。
[ダンディライアン]、[ダンディライアンⅡ]用のエンブレム。フライパンの上で焼かれるウサギがモチーフ。フライパンは大気圏突入形態の[ダンディライアン]を周囲の炎は大気圏突入時の高温を表している。
ウサギの表情も他のエンブレムとは大きく異なっている。
Vol.92●TR EMBLEM 2 (TR計画エンブレム2)
前回は一部のTR-1とTR-6、そしてTR-2からTR-5までのエンブレムを解説した。今回は、TR-1とTR-6を中心に解説していく。ウサギと機体特性を組み合わせている点は変わらないが、ギガンティック・アーム・ユニット装備は、単一の機体ではなく、同一のオプションを装備した機体すべてに使用される。これは各種Ⅱ形態のアドバンスド化機でも同様である。これらもカール・マツバラの手によるものである。
以下はこれらウサギのエンブレムが生まれた経緯にまつわる余談だが、コンペイトウ方面軍所属・アスワンを旗艦として結成されたばかりのT3部隊を視察、激励に訪れた『TR計画』推進首脳陣の中に、「教授」と呼ばれる男とひとりの子どもが居た。その子どもはオークランドのニュータイプ研究所に所属する強化人間であり、後のガンダムTR-Sの専属パイロットを想定として調整中の被験者であった。
「俺たちは君のたちのガンダムを育ててるんだよ。どんな機体に乗りたい?」
「可愛いのが良いな。ほら、あそこのおじさんが抱えてる兎みたいな」
ブラックオター小隊のマーフィー隊長が艦内で飼うペットを指差して、その子とスタッフ達の間で交わされた何気ない会話。
『TR計画』の各種エンブレムには、その様子を見ていたカールの想いが込められているのかもしれない……。
『TR計画』において当初完成を目指した[ヘイズル・フレア]用のエンブレム。全身に甲冑をまとったウサギの騎士が大剣を突き出している。
ウサギは影のような漆黒の体に、赤い目が際立っている。[ヘイズル・フレア]の完成を見越してあらかじめ製作されていた。
[ヘイズル]用のエンブレムで、リア・アーマーに付される。飛行帽とゴーグルを装着したウサギがモチーフとなっているが、これは増加装甲の装着をイメージしたもの。
[クィンリィ]用のエンブレムで、機体名が示す通り女王をモチーフとする。左右に大きく広がった髪(耳)は、ウエポン・コンテナを表しているともとれる。
[フルドド]および[フルドドⅡ]用のエンブレム。二羽のウサギがシンメトリーに配置されている。これはGパーツの合体と2機一組でその真価を発揮することを意味したものである。
もとはガルバルディβ高機動型用として用意されたエンブレムだったが、機体が失われたため、[ヘイズル2号機]に用いられた。大きな耳は2基のシールド・ブースターを表している。機体の増加リアアーマーに描きこまれる。
[アドバンスド・ヘイズル]用のエンブレム。ダークカラーで悪魔をモチーフにしたと思われる。その意匠から[フライルー]や[ファイバー]のエンブレムとは対になることを想定していたようだ。また、ウサギの体色が白から黒(紫)に変化しているのは、[ヘイズル]のカラーリングが変わったことを示している。右側の耳に包帯を巻いているが、これは強化シールドを表現。
[ヘイズル・アウスラ]ギガンティック・アーム・ユニット装備や、各種ギガンティック・アーム・ユニット装備機用のエンブレム。旧式化した[ヘイズル]をキョンシーに見立て、各種兵器で武装強化して戦力化していることを表している。帽子の左右から垂れた耳(?)はギガンティック・アーム・ユニットを、周囲の人魂はウィンチ・ユニットを示す。
[ハイゼンスレイ][ハイゼンスレイⅡ]用のエンブレム。兜を装着したウサギの騎士がモチーフ。目は前を見据え、耳は翼のように後ろに張り出し、力強く羽ばたこうとしている。
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