S.H.Figuarts(真骨彫製法)にウルトラマンダイナ現る!ウルトラマンティガに続き、平成三部作からの真骨彫製法化。権藤俊輔氏の演じたウルトラマンダイナ フラッシュタイプの“本物”を追求すべく、新規スキャニングデータを元に完全新規原型での開発となる。 そこでウルトラマンダイナ=権藤氏、そして監修の円谷プロダクション LSSより福井康之氏に加えて、原型担当である成田穣氏にもお集まりいただき、新たなる真骨彫製法について語ってもらった。
■S.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマンダイナ フラッシュタイプ
――今回のウルトラマンダイナはいかがですか?
権藤:これぞ正に、僕が当時演じていたウルトラマンダイナフラッシュタイプですよ!もう文句なしの出来ですね。満足感でいっぱいです。
成田:やはり彩色があると、いいですよね。感慨深いというか、やっとここまできたなっていう感じですよね。
福井:感慨深いですねえ(笑)。
権藤:顔の美しさはもう文句なしですね。うん。第一弾のティガも、もちろんとても素晴らしかったんですが、まだまだ改善した方が良い点もいくつかは出てきて。反省点を踏まえながら、更なる良いものができたんじゃないでしょうか。
成田:“権藤ウルトラマン”の一番の特徴的で綺麗なところは、ウエストのくびれたところからのヒップラインだと思うんです。ティガでも、もちろん再現できていましたが、でももっと良くできるんじゃないかなというのがあって。今回は関節が入っても、ウエストからのヒップラインはできる限り原型をトレースしたフォルムを追求してもらいました。可動のクリアランスをとりながら立った時の綺麗な形を出すのはすごく大変だったはずです。関節が入っているんだけどしっかりくびれて、でヒップライン綺麗に出てっているところは、とてもよく再現できていると思います。
権藤:うん、素晴らしい出来ですよ。待ち望んでいた皆さんにもきっと満足していただけるのではないでしょうか。当時、スーツを作っていただいた成田さんに、とても素晴らしい原型を作っていただいたんで。
――成田さんの原型を見たときの感想はいかがでしたか?
権藤:特に注文をつけるところがないくらい。なかったですね。もう、なんか本当に。
成田:いやいやいやいや、結構(笑)。
権藤:太ももの張り方とか?
成田:ヒップラインとか。もっとこう上の方からぐっとこういう感じで、みたいな権藤さんは絵まで描いて。
権藤:うーん、そっかそっか。そんなことすっかり忘れてた。
成田:結構、結構言われましたよ(笑)。
権藤:そうですよね(笑)。成田さんと仲悪くなろうが、もう容赦せずにここは言おうと思って。言ったんでした。
一同:(笑)
福井:“言われてなんぼ”みたいなところもありますからね。
成田:首の太さがどうとか、長さがどうしようかみたいなところとかもありましたよね。
福井:ウルトラマンダイナの顔は、正面から見ると割と“卵型”なんですよね。ウルトラマンティガと比較すると。それもあって頭と首とのバランスが難しくて、互いに意見を出し合いながらちょうどよいバランスに落としこみました。
成田:福井さんが入ったことで、中立的な立場で意見してくれる人が増えて、僕はすごくありがたかったんですよね。例えば僕が気づかないところを、「こここうだよね?」みたいな。そういうのが言いながらやれたのがすごく良かったなって。
権藤:うん。僕も言うこと聞かないところはもう最後まで縦に振らなかったですから。
成田:福井さんは造形もやっていて、さらに美術スタッフでもあるし。権藤さんと僕と、設計チームだけでやるよりも、この真骨彫チームでやれたことがすごく良かったと思います。
福井:自分としては、胸の厚さを張りすぎないようにお願いしたり、皺の入り方を気にしたりとかね。
成田:ある程度皺っぽいところがないと、特に銀色の部分とかは玩具っぽく見えちゃいますよね。どうしてもロボット感が出ちゃう。皺感がちょっと入るだけで生物っぽい、銀色なんだけど生物っぽい感じも出るんですよ。
――チーム感に円熟味も出てきたのでは?
権藤:ああ、そうですね、実際に。
成田:それは大きいですよね。福井さんに言われて思い出したことなんですけど、ダイナの“背びれ”は、ティガよりもちょっと出てるんですよね。
高さというか幅が。当時、ダイナのスーツを作る時、彩色前の単色状態を権藤さんに着ていただいて。で、デザイナーの丸山浩さんと一緒にラインをどこで区切るなどフィッティングをするんです。
その時、「帰ってきたウルトラマンみたいに背びれが出てるの、結構好きなんですよ」って話をしたら、丸山さんが「え、それ好き?」って(笑)。で、結果的にちょっと出したんですよ。その背びれを福井さんが「当時のスーツってそうだよね」って気づいてくれて。 せっかくなので真骨彫でも再現してもらいました。でも、高さを出しながら可動のクリアランスをとるのも結構難しいはずで。ただ、そこをクリアしていただいたからこそ、この立ち姿がすごく綺麗なんだと思います。
■真骨彫製法のスキャニング
――あらためてダイナとしてのスキャンはいかがでしたか?
権藤:ウルトラマンダイナ特有のポージング、骨盤を後傾させて、尚かつ脊柱をグッと猫背に、前のめりに構えることができるか、どうかがポイントなんですよね。
今回は番組スタート当初、登場した頃のウルトラマンダイナにしたいとなり、僕が演じたダイナをベースにしていただきました。ダイナの独特の構えは骨格的要因が非常に影響するので。初代ウルトラマンから踏襲した猫背の構えと指先の開きの感じをきっちりデータとしてとってもらいましたね。
特にウルトラマンダイナは骨格的要因が非常に影響するので。初代ウルトラマンから踏襲した猫背の構えと指先の開きの感じをきっちりデータとしてとってもらいましたね。
――いわゆるダイナ特有の構えですね。
権藤:「僕のダイナはこういう感じですよ」と、見れば誰でもわかる感じのポージングを再現できるようには(開発チームに)約束していただきましたけど。
――ティガのときは手の表情にもこだわられたとお聞きしました。
権藤:今回はサムズアップとか増えてましたね。あとは基本的には、大きな変化はないと思うんですけども、前作の流用ではなくて完全新作です。
――ティガのスキャンでは「足の裏まで撮られて驚いた」っていうお話もされてたと思うんですけど、今回も足の裏まで?
成田:足の裏......?
権藤:足の裏。もう本当全身。ボディスキャンですよ。
成田:へえ~、そうなんですか。
――成田さんはスキャンに立ち会われなかったんですか?
成田:ティガの時に立ち会えなくて。今回のダイナには立ち会ったのですが、その時は足の裏までやっていなかったので(笑)。
――成田さんから見たダイナのスキャンはいかがでした?
成田:権藤さんとお会いするのもたぶん25年ぶりとかくらいで。体を作るのに一ヶ月、時間が欲しいっておっしゃられてたんですよね?
権藤:やはり当時の体にはならないので、あくまで骨格のデータとして見ていただいた感じですよね。体作ると言っても、たいしてやってないんですよ。
成田:そうなんですか?
権藤:肌黒くしただけなんですよ。泳ぎに行って、 日焼け全く関係無いのに(笑)そもそもがたかだか4週間での劇的な肉体改造なんて不可能ですから。
成田:ええっ(笑)!?とはいえですね、25年経ってて、またあの頃の体形でいられるのはすごいですよ。
権藤:実際いられてないですよ。まあまあ、自分に厳しく。(自分としては)全然良い点数はあげられないですよ。うん、いやだから、企画自体聞いた時「大丈夫この人たち?」と思いましたけどね? (スキャンするとか)そんなこと言い出して。
一同:(笑)。
成田:でも普通だったら「いや太っちゃってさあ~」みたいな感じあるじゃないですか? そういうの一切ないので。やっぱり凄いなと思いました。久しぶりにお会いした時も「ティガだ!」みたいな感じでしたよ。
権藤:そうですか? ありがとうございます。
成田:すごく嬉しかったですね。なんかその当時のままでいてくれるなんて。それにティガ、ダイナと商品があって、福井さんも僕もこういうところで今も関わってる、また再会があってみたいな。それがすごく嬉しかったですよね。商品がとはまったく別の話になっちゃうけど(笑)。
福井:今回、ティガからダイナとうことで、もちろん演じられてるのはどちらも権藤さん。「同じ方が演じてるんだから、素体は流用でいいじゃん」ってことではなくて、ティガとダイナは違うウルトラマンであることを前提でやれたことが良かった。普通は同じ素体を使いそうですが、あらためてスキャンをしていますから。
成田:普通なら使い回し。ちょっと表現が悪いけど(笑)。
福井:ティガは素晴らしかったけど、さらにその上を目指そうと。その気概が良かったですよね。
■ウルトラマンダイナ
――当時、ウルトラマンダイナのデザインを見たときの感想はいかがでしたか?
権藤:ティガ、ダイナ、ガイアと3作品やりましたけど、それぞれの顔を決定デザイン画で初めて見た時の第一印象で、一番かっこいいなと感じたのはダイナの時でしたよ(笑)ティガからガラっと変わったこともあり、「この顔、かっこいいな」と思って。ガイアのときは、本当はアグルをやりたかったんですけどね。
成田:実は「ガイアを権藤さんで!」って推したの僕と丸山さんなんですよ。
権藤:そうなんですか?
成田:ティガ、ダイナと権藤さんでスタートしたので、やはり権藤さんで!と。そしてゴールは中村さんで。
――成田さんはダイナのデザインはいかがですか?
成田:マスク原型を制作する時にデザイン画をもらって。丸山さんからは、ティガは男性でもなく女性でもなく、中性のイメージだと。だけどダイナは男でいきたいと仰っていました。あとデザインの系統として、マンの系統とセブンの系統、要するにセブンからタロウみたいな(笑)。でも、ダイナではエース系統をイメージしてもらいたいとも話していました。トサカがこう出てるやつ。
権藤:なるほど。
成田:ほかにエースの系統ってなかったんですよ。本編始まってからのイメージを見ると、もっと男性っぽい、ちょっとレオみたいな、もっと勢いのあるフォルムでもよかったかな。シュっとした美形のイケメン系の顔にはなってるんだけど、もっと“やんちゃ”っぽい顔でもよかったかもしれませんね。
――では最後にS.H.Figuarts(真骨彫製法)ウルトラマンダイナを待っているファンへメッセージをお願いさせてください。
権藤:何度も言うことなんですけれど、本当に感謝しかないですね。当時の僕は、こんなに時間が経っても、ずっと変わらず応援してくださる方々がこれほどいるなんてことは想像もできていませんでしたから。本当にね、嬉しい気持ちでいっぱいです。20代の後半を捧げた我が青春の東宝ビルトスタジオはなくなっちゃいましたけれども、こうやっていつまでも皆さんの記憶に作品が残っていくことこそが僕らの最大の喜びです。そして今回、こんなに精巧なアクション・フィギュアまで発表できる驚きを痛感しています。かつてのちびっこ達にこの真骨彫ダイナを手に取って、ヒーローに胸をときめかせ、応援していた頃を懐かしく思い出し、これからもその気持ちをずっと大切にしていって欲しいと願っています。
成田:業界と関係ない知り合いが「うちの子供が小さい頃に観てました」とか、一緒に仕事してる方が「小さい頃、観てたんですよ」みたいな(笑)。あと僕の甥っ子も小さい頃ティガ大好きで。そういう作品に関われていたことがすごく嬉しいですし、誇りに思っています。自分にとってすごく大事な作品が、真骨彫製法として形となって現れて。当時、見てた人とかにもやっぱり「当時こういうの欲しかったよなあ」と思ってもらえて、大人になった今、自分のお金で買もらえる。これがファンの皆さんの手元に届いて、懐かしみながら、でも遊び倒してほしいなと思います。
福井:TVに登場したダイナが、そのまま手元にいるような完成度に仕上がっています。ぜひ皆さんも、このクオリティを確認していただきたいです。
――ありがとうございました。
権藤俊輔(ウルトラマンダイナ/スーツ・アクター)
■PROFILE
1971年生まれ。
ジャパンアクションクラブ(JAC)出身。『ウルトラマンティガ』、『ウルトラマンダイナ』、『ウルトラマンガイア』と平成三部作すべての主役ウルトラマンとして活躍。特に権藤氏が作り上げたウルトラマンティガは“権藤ティガ”と呼ばれ、今なお高い人気を誇る。福井康之(円谷プロダクション LSSチームマネージャー)
■PROFILE
1968年生まれ。
『ウルトラマンネオス』パイロット版に造形・キャラクターメンテナンスとして参加。以降多くの円谷プロ作品に携わる。現在円谷プロダクションの造形部門であるLSSチームの代表。成田 穣(造形家・原型師)
■PROFILE
1968年生まれ。
撮影用マスク原型、およびスーツの制作チーフを担当。イーヴィルティガ、ダイナ、ガイア、アグル、ゾグ第一形態、ヒュドラなどは成田氏による。S.H.Figuarts(真骨彫製法)ではウルトラマンティガ、ウルトラマンなどを担当している。