











勢いと、力の入り具合……劇中の“動き”を再現できる関節構造
「ダブルオーライザー」は、アニメ「機動戦士ガンダム00」の後半の主役機である。半永久機関である「GNドライヴ」を2機搭載することで規格外の力を発揮するはずだった「ダブルオーガンダム」は、GNドライヴのマッチングがうまくいかず完全な性能を発揮できなかった。
デザインを担当したDRAGON STUDIOの坂埜竜氏
今回は彩色前の試作品を前に話を聞いた
こだわりの膝関節。“コの字”ではなく自然な曲がりに見えるように設計されている
首もドラム状の関節になっている
ぐいっと肩に力を込めたようなポーズが可能
そこで支援機「オーライザー」と合体し、GNドライヴを安定させることで当初予定した本来の性能を発揮することが可能となった。合体形態のダブルオーライザーは、機体を粒子化させて敵の攻撃を無効化したり、GN粒子により人々の思いを伝達させるなどMSとして別次元の性能を発揮した。
立体化フィギュアとしてもダブルオーライザーは魅力的な素材だ。格闘戦が主体のダブルオーガンダムは派手なポージングが似合うし、大型の剣「GNソードIII」を構える姿なども楽しい。そしてなにより“合体”である。玩具としての遊びごたえも盛り込んだそのコンセプトは、これまでも様々な商品が生み出されている。「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」はどのような商品になったのか? 今回は試作品を見ることができた。
今回の試作品はダイキャスト部分の検証も兼ねているという。可動や素材の検証のためか黒い成型色が使われており、シャープな造形も相まってちょっとダークヒーロー風だ。触ってみてまず気が付くのは金属部品の多さだ。特に足部分は関節だけでなく、腿、すねも金属パーツで構成されており、手に持つとずっしりと重みが感じられる。
「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」の設計デザインにおいて坂埜氏は、「アクション性の高いダブルオーライザーを追求する」という方向で作っており、独特のアレンジを効かせる「METAL BUILD」シリーズとは異なる方向を目指している。坂埜氏は「『METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー』はデザインは劇中の“動き”を再現できる方向でデザインしました」と語った。
坂埜氏のこだわりは特に“関節”に込められている。手足の関節の“位置”をオリジナルのデザイン画とは絶妙に変化させ、さらに軸部分もずらして配置することで、動きと勢いのあるポーズを可能にしたという。素立ちの形でもマッシブな雰囲気があり、パワフルさが感じられるスタイルになっている。
まず最初に坂埜氏が挙げたのが「1軸関節」。これまでのMSフィギュアの多くが肘や膝を深く曲げるために上腕と前腕の間、腿とすねの間に関節パーツを挟み込み“2軸”にすることで手を肩につけたり、正座をさせることができるほどに深く曲がる表現を可能にしていたのだが、坂埜氏は1軸で腕や足がしっかり曲がるように関節の軸を調整している。「人間の関節は2軸じゃなくて、1軸です。それに私はどうも2軸関節を曲げたときの“コの字”シルエットがあまり好みじゃなかったので、今回はあえて1軸の関節表現にこだわっています」と坂埜氏は語った。
坂埜氏は“動くダブルオー”を本商品で追求したかったという。ケレン味のあるポーズ、力がこもり、激しい動きを感じさせる。“勢い”を感じさせるダブルオーライザーを本商品で追求したかったという。
このため、胴周り、肩の関節にも幅広い可動域が持たせてある。腰をひねったり、上半身を大きく反らせたり、射撃ポーズでもただ腕を伸ばすだけでなく、ぐいっと肩を入れて射撃を行なうなど派手な動きができるポーズが実現できる設計になってるという。腹部分はブロック構造で細かく分割され、腰と胸への接続は可動域の広いボールジョイントで自由な表現を可能としている。肩周りの関節設計も複雑でその表現力の高さが楽しい。
今回特に動かしていて面白いのが膝部分だ。腿部分のパーツが膝の動きと連動し、ロボットらしい棒が折れたような極端なシルエットではなく、人間の膝のような丸みを帯びたラインを作り出す。ここも2重関節のラインではなく、1軸での機構にこだわった部分だという。「膝はデザイン上2軸で構成していますが、曲げたときのシルエットができるだけ“くの字”に見えるように設計しています。今回は人間的な関節構造をダブルオーで実現したかったんです」と坂埜氏は語った。
首部分もより設定画に近い解釈で立体化をしている。首回りが“ドラム状”の関節になっているのだ。これにより自由度が増し、ぐいっと下を向いたり見上げることが可能になっている。ダブルオーガンダムや、ガンダムエクシアは肘や膝にドラム状の関節が使われており、統一感が生まれている。
こういった関節表現やパーツ分割は現在の3Dでの設計技術と、工場での精度の高い部品製造技術によって樹脂素材を多用する通常の「ROBOT魂」シリーズでも可能だが、「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」ならではのポイントは、金属パーツを多様したことで生まれる金属の“質感”と“重量感”だという。「私自身トライサンプル(試作品)を手にしたとき、見た目以上の重量感に驚きました。写真で伝わりにくいのですが、これはかなり豪華な感じですよ」と坂埜氏は語った。
実際、試作品を目の前にすると“金属を使った豪華さ”が強く伝わってくる。金属と樹脂パーツの組み合わせは「METAL BUILD」シリーズを前にしているような感覚、所有者が細部をチェックしてその商品の豪華さに満足する感覚に近い、「すごい商品が目の前にある」という気持ちをかき立ててくれる。本商品は「METAL BUILD」シリーズよりサイズは小さいが、このサイズで精巧な金属パーツが作れるのも現在の技術ならではだという。最先端の技術を盛り込んだダブルオーライザーフィギュア、というわけだ。
坂埜氏は「METAL ROBOT魂 ダブルオーライザー」製作に当たりTVシリーズから劇場版まで見直して集中的にチェックしたが、ダブルオーガンダム/ダブルオーライザーの動きの“速さ”にチェックしていてかなり苦労したという。その中でお気に入りがダブルオーガンダムとアルケーガンダムの地球上での対決シーン。坂埜氏はこの時のダブルオーガンダムの動きを大いに参考にし、その戦闘シーンを再現できることを目標にしたという。